型のいいのが竿をしぼり、順調に釣果が伸びている。
放流物ばかりではなく、年を越した天然物が釣れているのだから嬉しい。
パーマークの下がオレンジ色の奇麗な奴や、腹の部分が黄色い奴など、
色々と楽しませてくれる。
山の中腹ではピンク色のやしおつつじが満開をむかえており、日に日に春めいてくる。
昼飯を食べ順調に釣り始めていたのだが、ふと気づくと知らない釣り師が後ろを通り過ぎ、
そのまま私のすぐ上流で竿を出し釣り始める。
いくら解禁したばかりだからと言っても、
私が釣っているすぐ目の前に入らなくても良いじゃないのと思いながら釣っていると、
大物が釣れたようで竿を立てて魚を弱らせながら引き寄せてタモに入れている。
良く見ると25センチ程の中型サイズ、私ならハリス0,3でも一気に引き抜いてしまう。
随分かっこつけてると思いながら『良い型ですね』と声を掛けて上流のポイントに移動、
立て続けに3尾ほど釣ると何やら不満そうな表情でこちらを見ている。
そして近づいて来て『小さいのは放流してください!!』と声をかけてきた。
なんとその男は監視員だったのだ。
私の前に割り込んできてまで釣っていたのは、
ホームで負けるわけにはいかないというプライドがあったからなのだろうか!? 笑
私は『小さいサイズで針を飲まれた奴以外は全て放流してますよ』と答えると、
不満そうな顔をして何か言っていたが、まともに相手しても仕方ないので、
『この川にはもう50年も通っているがそんなこと初めて言われたよ』と返す。
すると白いちょびヒゲを生やしたその男は、笑
『俺は監視員をやっているけどあんたの顔は見たことが無い』と監視員証を見せてのたまう。
そりゃそうだろう、四月後半になれば私は東北方面に出かけ、
天然岩魚を追っているのだから、あんたに会うことは無くて当然だよと思いながら、
さっきまでの楽しい時間は何処へやら、そそくさと竿をたたんだ。